干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 俊介は向き合った美琴の両手を、包みこむようにぎゅっと握った。

「今まで苦しい思いをさせてごめん。悲しい思いをさせてごめん。でも、もうこれからは決して離さない」

 俊介の瞳には力強い光が見える。

「でも……」

 美琴は急に由紀乃の顔を思い出し、眉尻を下げて俊介を見た。

「心配しないで。この問題はちゃんと解決させます。父を説得してたら、ここに来るのが遅くなってしまったんです」


 俊介は一旦口をつぐむと、もう一度姿勢を正して美琴に向き直った。

 そして美琴の顔を、愛おしそうに見つめたままゆっくりと口を開く。


「美琴。結婚しよう」


 美琴は一瞬何を言われたのか理解できず、まん丸な目を広げたまま立ち尽くしていた。

「へ……?」

 口をあんぐりと開けて呆けている美琴を見て、俊介は笑っている。

「美琴。口が開いてます」

 俊介が自分の口元を指さしながら言い、美琴は慌てて両手で口を覆った。


「も、もう一度、聞かせてください……」

 美琴は次第に溢れてくる涙をそのままに、俊介を見上げる。

「何度でも言います。結婚しよう」

 俊介はそう言うと美琴のおでこに、こつんと自分のおでこを優しくぶつけた。

 美琴は(こら)えきれずに、声を上げながら泣き出す。


「返事を聞かせて?」

 俊介はそう耳元で囁くと、そっと美琴を抱き寄せた。

 美琴はひくひくと肩を震わせながら、優しい顔でほほ笑む俊介を見上げる。

「はい」

 その笑顔を見ながら声を出した美琴を、俊介は力いっぱい抱きしめた。
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