あなたがいるだけで…失われた命と受け継がれた想いを受け止めて…

「あのね、私が付き合って欲しいって言っているのは。そうゆう関係じゃないんだよ」
「え? 」

 そっとヒカルの手を取った奏弥…。
 怪我をしている右手を優しくなでてくれる奏弥の手が、とても暖かく感じた…。

「護りたいだけなんだ…。私は、自分の子供をを先に亡くしてしまったから。…城原さんを見ていると、亡くなった娘を思い出す。そして…何となく息子にも似ているような気がするんだ。…亡くなった娘と息子は、双子だったから。生きていれば、城原さんと同じくらいの歳だと思うから。…一人で背負って、今日みたいな危険な目に遭って欲しくないと思うから…」
「そんな事まで…」

 そんなに優しくしないで下さい。
 決心が鈍るから。

 ヒカルはギュッと口元を引き締めた。

「城原さんを狙ったのは、千堂さんだよね? きっと」
「え? 」

 何で知っているの?
 ちょっと驚いたヒカルを見て、奏弥はクスッと笑った。

「聖龍が堂々と宣言したなら、彼女がきっと逆上するだろうからね。千堂さんの事は、甘く見てはいけないよ。彼女は…殺人犯の娘だから…」

 嘘…そこまで知っているの?

「私は何でも知っているよ。彼女がずっと、聖龍を追いかけていた事も。そして、聖龍に近づく者をことごとく消してきた事も。その犠牲者の中に、私の娘と息子もいるから」

 もしかしてこの人…全てを知っていて千堂里奈を雇ったのかな?


 俯いていしまったヒカルの手に、そっと手を重ねた奏弥。

「意地悪をしてごめんね。なんだか、娘が反抗しているような気になってしまったんだ。息子は大人しくて、いつもいい子でいてくれたけど。娘は真逆だったから。城原さんを見ていると、どうしても娘と重なってしまうんだ」
「…あの…。もしかして、全てご存知なのですか? 」
 
 奏弥は何も答えずじっとヒカルを見ていた…。

「全てご存知で、千堂さんを雇われたのですか? 」
「それは、今は答えられないから。もう少し、時間が欲しい」
「そうですか…」
「ただ、これだけは知っておいて。私は、城原さんの味方だから」
「…はい…」

 小さく返事をしたヒカルを見て、奏弥はホッとした笑みを浮かべた。
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