夜這いのくまさん
どうして俺がいるのに他の男を考えるんだ。俺は好きなのに。彼女は別の男が好きらしい。
たまに彼女の表情から匂わすような雰囲気が漂ってくることがある、それは彼女が虚空を見つめているときによく見るのだ。

「それをシェリーに言われる覚えはない」

吐き捨てるように言い捨てると彼女は完全に固まった。そして、「ごめんなさい」とすぐ謝った。謝った彼女は俺の態度を肯定しているようでますます腹が立ってしまい、彼女の細い両手を掴むとそのまま押し倒した。

「シェリーは誰と未来を思い描いているかは知らないが、それが俺でないことくらい今までの態度をみていたら知っている。腹立たしいが、人を弄んで楽しかったか?」

彼女は呆然と首をゆるゆると横に振った。
そしておそろしいものをみるような目でこちらを見上げていた。

「ごめんなさい、ごめんなさい…」

彼女は目をとじて、ぎゅっと眉間に皺をよせて涙がこぼれない様に強がっていた。
いっそうここで噛みついてキスでもすればよかったか。
でもこんなことをしたら決定的になにかが壊れてしまうと感じ取っていたのだ。
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