夜這いのくまさん
帰りは送らなくていいと、言ったが無理やり送った。その日はそれからというもののずっと無言だった。今日、俺は試験結果の報告に一時戻らなくてはならないことを伝えなかったららいけないのに。

村の入口に、いつもは立っていない一人の黒い陰が立っていた。近づけば目の鋭い男がシェリーを睨みつけるように見つめていた。
彼女は馬から降りると、小さく震えだした。

「迷子にでもなっていたのか、シェリー」

「アーレット…」

「僕の婚約者を送ってくれてありがとうございます。」

オレノコンヤクシャ。そして引きはがすようにシェリーの腕を掴んだ。
目の前が真っ暗になった。





とうとう帰ると、打ち上げと称して騎士団のメンバーと呑みに行った。にやにやと詰め寄って「愛しのシェリーちゃんきかせてくださいよ」とうとう春が。そんな期待を一身に受けたがなんの進展もしていない。むしろ悪化して、破滅に終わった。さよなら俺の恋。終わるくらいならあのとき思い出でもキスをしたらよかった。

官舎で持ち込み飲み会で、シェリーについて根掘り葉掘りきかれた。
「俺のことをかわいいっていうんだ」っていうとみんなして場が凍り付いた。
そのあとに「失恋したんだ」というと一様に悲しそうに口をへの字に皆して曲げ、一気にジョッキに酒を注がれた。

その気がないのに俺にお礼でサンドイッチを作ってくれて、強面の顔もかわいいといってくれてひるまない女だった。改めてシェリーはいい女だった。
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