夜這いのくまさん
「シェリー今後とも仲の良い付き合いをしよう。実に楽しそうだ」

「ぐっ」

「はは、いい声だ」

彼はわざと傷をつけるように、シェリーの喉仏を親指で上から下にひっかいた。
爪が痛くて思わず顔をしかめると、彼はこどものように無邪気に笑った。

「名残惜しいけど、帰ることにするよ。シャーレイとシェリーも頑張って」
と実に心にもない激励をし、気絶しているシャーレイを放置し帰っていった。

その後、迎えたシャーレイの結婚式。村中がお祭り騒ぎのように浮かれる中シャーレイだけは酷く憔悴した面持ちでそこに佇んでいた。そこで初めて、私は女性から憐みの表情を、男性からはこの間アーレットが見せたような欲情を孕んだ表情を見ることになった。シェリーはその時、自分に置かれている環境が地獄であることを認識したのだった。花嫁は処刑をまつ死刑囚のようだと思った。シェリーは新郎に肩を抱かれてたっているシャーレイを見て、涙が止まらなくなった。

花嫁は結婚式が終わると、小屋に入っていく。その姿を村中の人間が見送った。
彼女は小さく震えていて、旦那はなだめるように背中をさすっていた。
女たちは自宅に帰り、男たちは帰ってこない。
真夜中の十二時になって、扉を開かれる。それまでに着いたもの同士、喧嘩のように殴り合いが始まったらしい。そして開かれた扉にいたのはその喧嘩に買った、アーレットの姿。
< 5 / 42 >

この作品をシェア

pagetop