夜這いのくまさん
その後のことはシャーレイから聞けなかった。

ぽつりぽつりとシャーレイが吐き出したときはすでに結婚式から一か月ほど立った時だった。
ただ、さっさと終わらせてくれと思った。心がばらばらになったと。
もしかしたら孕んでしまったかもしれないと泣いていた。

もし、孕んでしまったら、その子は愛せないー---とも。

アーレットの凶行を思い出し、シェリーの顔色の悪さに父親も気の毒に思ったのか、なんとも慰めにならない救いのない言葉を送ってくれた。

「村一番の高級取りだ、この村の中で誰よりも幸せになるさ」

父親もやっぱりこの村の人間だ。
愕然と見つめた父親が今人の形をしているのかシェリーには判断できなかった。
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