【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 ファンヌはここでの仕事を終えると、エリッサのところによってお茶を飲んでから帰ることもあった。年代も近いこともあり、他愛のないおしゃべりに花を咲かせる。むしろ、ファンヌはエリッサからそういったおしゃべりを通して、このベロテニアについて学んでいた。
 特に獣人の血筋と、王族の関係について。獣人の血がまだ色濃く残っている王族。他の民とは何が違うのか。
 エリッサが言うには「よくわかんない」だったのだが。
(エリッサ。こういうことだけは、よくわかっているのね……)
 悔しそうに唇を噛みしめて、ファンヌはエルランドを見上げた。この顔は有言実行してやるという自信に満ちている顔だ。
 つまり、ファンヌが彼の名を口にするまで、本当に手を離さないつもりなのだろう。
「エルランド先生……」
 ぱっと、エルランドの顔が輝いた。
「エルランド先生とお呼びすればよろしいですか?」
「ファンヌがオレに『先生』をつけるなら、オレもファンヌのことをファンヌ『先生』と呼ぶ」
 初めて「ファンヌ先生」と呼ばれた彼女は、首をすくめた。全身に恥ずかしさが込み上げてきたからだ。
「や、やめてください。先生から先生と呼ばれると、気持ち悪いです」
「だったら、ファンヌもオレのことを先生と呼ぶな」
 呼ぶな、と言われてファンヌは少し考えてから口を開く。
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