【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 ちっ――。
 クラウスは舌打ちをした。
(なぜあいつがアデラと会う必要がある)
 怒りにまかせて床を踏みしめながら、クラウスは自分の部屋ではなくアデラの部屋の前に立つ。扉を叩くと、不機嫌そうなアデラの声が中から聞こえてきた。
「僕だよ、アデラ。気分はどうだい?」
「あぁ、クラウス……、会いたかったわ……。……っ」
 少し下腹部をふっくらとさせたアデラは、クラウスの姿を見た途端、顔を歪ませた。
「クラウス。あなた、何をしてきたの? その……臭いが……」
「工場の片づけをしてきた。あそこで新しいことを始めようと思ってね」
「そ、そう……」
 鼻と口を手で覆ったアデラは不審な者を見るような視線をクラウスに向けた。
「わ、私……。気分が優れないから、休むわ」
「そうか。君の顔を見にきただけだから、気にしないでおくれ」
「え、えぇ……。だけど、クラウス。ご飯のときまでにはその臭いをなんとかしてね」
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