【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 パタンと薬草事典を閉じ、お茶を飲むためにソファから立ち上がったとき――。
「ファンヌ。これにサインを頼む」
 ノックもせずにエルランドが勢いよく部屋に入ってきた。少し遅れてから、息を荒げたショーンもやってきた。間違いなく彼はエルランドを追いかけてきた。
「ぼぼぼぼぼ、坊ちゃん……。……、もう、少し……、段取りと、いうものが……」
 肩で息を大きくつきながら、必死でエルランドの行動を止めようとしているショーンの頭髪も少々乱れている。
「順番。その順番のためにこれにファンヌのサインが必要なのだろう?」
 何か間違えているのか、と言わんばかりに、エルランドはショーンを見ていた。だが、息があがっているショーンは、それ以上言葉を続けることができない。となれば、エルランドを止めるものは誰もいない。
「エルさん。それは何ですか?」
 扉の前に立っているエルランドの方に、ファンヌはゆっくりと近づいた。
「婚約誓約書というもののようだ。父上に報告にいったら、いくら相手が『番』であっても、すぐに結婚は無理だと言われた。婚約期間を経てからの方がいいらしい。だから、ファンヌ。オレと婚約してくれ」
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