【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「遅かったな」
「ごめんなさい。クラウス様に捕まってしまいました」
 先ほどの件をエルランドに隠すつもりはない。
「そうか……。悪かったな」
 側にいなくて悪かった。エルランドはきっとそう言いたかったのだろう。
 エルランドがファンヌの前に何かを差し出した。どうやら今日の研究発表のプログラムと論文誌のようだ。
 チリチリンと鐘が鳴った。最初の研究発表が始まる。
 ファンヌは今日のプログラムにざっと目を通した。最後にマルクスの名があったが、クラウスの名も併記されていた。
(もしかして。マルクス先生の共同研究者がクラウス様?)
 発表が始まっていたが、ファンヌは論文誌をペラペラとめくっていた。目的はマルクスとクラウスの論文の中身だ。
 論文誌をめくる手がなぜか震えていた。理由はわからない。論文のテーマもプログラムで確認したはずなのに、なぜかファンヌの心臓がバクバクと音を立てている。
 だが、論文の中身はテーマ通りのものであった。マルクスがずっと研究を続けていた『頭髪を豊かにする薬』についての効能と、それの応用方法だった。この応用方法というのが興味深く、同じ『薬草』であっても、保管方法や温度によって効能が変化すること。『頭髪を豊かにする薬』と同じ配合で『調薬』しても、『調薬』した環境によっては、違う効能を示す薬ができあがることが、式や表を用いて記されていた。かなりの数の実験も行われたようで、それを示す数値も記されている。
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