婚約者の浮気相手が子を授かったので
 二人は王宮の敷地を出て、神殿へと向かった。隣の敷地であるため、歩いて行ける距離でもある。
 二人で最後に歩きたいとファンヌは口にした。
 ファンヌの隣にいるのは王太子だ。恐らく、ファンヌの気付かぬところに彼の護衛はいるのだろう。
 つまり、クラウスと一緒になるとは、そういうこと。どこからか誰かから見張られている世界。それを考えるだけでも、ファンヌは息が詰まりそうになっていた。
 妊娠初期であるアデラは、部屋で休んでいると言った。その部屋も、彼女の妊娠がわかってから、クラウスが用意したものらしい。
 残念ながらファンヌは、王宮に専用の部屋を持っていない。
 ファンヌがクラウスと共に神殿を訪れ、神官長に書類を手渡すと、彼は驚いたように口を開けた。だが、すぐに平静を装い、書類を受け取る。
「神の名の元に、お二人の婚約は解消されました」
 ファンヌは恭しく頭を下げ、神官長の元を去る。
 神殿から外に出た途端、ファンヌは青い空に向かって両手を大きく上げ、伸びた。
「クラウス様。今までお世話になりました。私が受けておりました王太子妃教育も、本日で終了です。どうかアデラ様とお幸せに」
< 4 / 269 >

この作品をシェア

pagetop