【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「いやぁ、ファンヌ嬢のおかげで今日は早く終わった。いつもであれば、もう二人、調薬師がいるのだが。今日にかぎって二人とも休みだ」
 オスモはがははと笑った後、チャリンと機嫌よくファンヌの手の平の上に金貨を置いた。
「今日の駄賃」
 まるでお小遣いをもらった子供のような気分なのだが。
「大先生、これでは貰い過ぎです」
 まだお昼前。ファンヌがお手伝いしたのはたったの二時間半。それでも手の平の上には金貨が三枚。平均的な一日分の労働よりも多い報酬だ。
「それだけの働きをしたということだな。いつも昼前の方が忙しい。昼の後は、私一人で大丈夫だ。他の二人も、昼前だけ手伝って、昼の後は研究室にこもっているくらいだからな」
 そこまで言ってから、オスモはエルランドに視線を向けた。
「小遣いを与えたんだから、エルはデートでもしてこい」
 オスモに掛かればエルランドも子供のように見える。何か反論したそうに口を開きかけるものの、言葉は出てこない。
「ファンヌ嬢。ここから少し歩いたところに、美味しいレストランがあるんだ。伝統的なベロテニアの料理を出す店だよ。昼はそういうところで食べたいと思わないかい?」
「私。まだベロテニアの料理がよくわからないのです」
「だそうだよ、エル」
 やはりエルランドは何か言いたそうに口をパクパクとしている。五回ほどそれを繰り返した後、やっと彼から言葉が出てきた。
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