ビター・マリッジ

三年付き合った元恋人のことを本気で好きだった姉は、彼が自分の元に戻ってきたことで、完全に我を失った。

両親に幸人さんとの婚約を破棄するように迫り、それがなかなかうまくいかないとわかると、恋人と一緒に駆け落ち同然で家を飛び出してしまったのだ。

婚約が決まっていた姉の逃亡に、菅原工業の社長はかなりご立腹だったらしい。

四ノ宮グループのほうが立場が上だとはいえ、非があったのはこちらのほう。家を飛び出してしまった姉の代わりに頭を下げる父と母を見るのは、忍びなかった。

姉との婚約が破談になったことで、四ノ宮ホールディングスと菅原工業の縁は切れるかと思ったのだが。なぜかしばらくして、幸人さんとの結婚の話が妹の私のほうに巡ってきた。

姉との婚約が破談になって落ち込んでいた菅原工業の社長を宥め、父に私とのお見合い話を持ちかけてきたのは幸人さんだったらしい。

姉から屈辱的な仕打ちを受けたにも関わらず、幸人さんは自社の利益を考えて、四ノ宮ホールディングスの娘である私を姉の代わりの婚約者に選んだ。

だけど、実際のところ幸人さんが選んだのは私じゃない。彼が欲しかったのは、私と結婚することでできる、四ノ宮グループとの繋がりだ。

その事実を私がはっきりと思い知らされたのは、結婚式を終えて初めて、幸人さんと二人きりになった夜のことだった。

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