ビター・マリッジ
「正直、俺は今の時点ではどっちでもいい。家族が増えればそれはそれで喜ばしいし、もう少しふたりだけでいて、こんなふうに梨々香に誘われるのも悪くない」
目を覆う梨々香の右腕を退かすと、彼女が俺のことをジトッとした目で見上げてきた。
「別に、誘ってません……」
「そうか」
ふっと息を漏らしながら笑うと、梨々香が俺の首の後ろに腕を回して身体を起こす。
「でも、幸人さんが私と同じでよかったです」
「同じ?」
「はい。幸人さんとの赤ちゃんは欲しいけど、もう少しふたりだけでいたいな、って欲張りな気持ちもあるんです。最近の幸人さんは、すごく優しいから」
梨々香が俺に近付いて、そっと唇を重ねてくる。