ビター・マリッジ




「四ノ宮さん、今から食堂行くんだけど、一緒にどう?」

昼休み。午前中の仕事を終えてパソコンを閉じようとしていると、同期の小山くんに声をかけられた。

同じ経理部で働く小山くんは、ときどき昼休みに私のことをランチに誘ってくれる。

率直で裏表のない小山くんは、同期の中でも付き合いやすい同僚のひとりだ。

普段ならすぐに小山くんの誘いを受けるのだけど、今日は幸人さんとの約束がある。


「せっかくなんだけど、今日はちょっと昼休みに行かなきゃいけない場所があって……」

「そうなんだ?四ノ宮さんが昼休みにプライベートな外出って珍しいね。あ、もしかして、旦那さんとランチとか?」

にひっと笑った小山くんは、冗談のつもりでそう言ったんだと思う。それなのに、私の顔は彼の言葉に過剰に反応して真っ赤になってしまった。


「あれ、ほんとに旦那さんとデートなんだ?」

「そんなんじゃなくて。忘れ物を届けたついでにご飯を食べるだけなの」

あくまでも、食事するのは忘れ物を届けるついでだ。

そのことを強く主張しながら顔の前で手を振ると、小山くんにクスクスと笑われた。

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