ビター・マリッジ

「はい、これ。四ノ宮さん」

そのとき、隣に座っていた小山くんが私の前にビールグラスをドンっと置いてくれた。


「みんなグラスきてたら、そろそろ乾杯しよっか。ほら、石原。立って立って」

主役の石原さんを囃す小山くんの声で、私と石原さんの会話は途切れる。


「石原さん、結婚おめでとう!そして、今までお疲れさま!!」

周囲の視線が一斉に石原さんだけに集まり、立ち上がった彼女が恥ずかしそうに笑う。


「みんな、今日はありがとう」

あちこちで、グラスがぶつかり合う音がする。

私もその流れに合わせてお祝いの言葉を口にしながら、誰にも気付かれないようにこっそり小さく息を吐いた。

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