とある事情で無言になったら、超絶クールな婚約者様が激甘溺愛モードになりました。
     * * *

「ライオネル様、あのっ、自分で降りますわっ!」
「ダメだ、昨日はステップでつまづきそうになっただろう? 僕だってハーミリアを抱き抱えるくらいはできるから、安心して」
「ひぇぇぇっ!」

 ライオネル様の爽やかな柑橘系の香りが、ふわりとわたくしを包み込む。スラッとして見えるのに、意外と逞しい腕に抱えられて、馬車の前に優しく降ろされた。

 誰か助けて欲しい。
 ライオネル様の本気がハンパなくて、わたくしの心臓が持ちそうにない。これは確実に十年は寿命が縮まっているに違いない。

 だって! あのライオネル様に! お姫様抱っこされて! 馬車から降ろされたのよ——!!

「ふふっ、照れているハーミリアもかわいらしいな」
「ライオネル様、お願いですからそんなこと言わないでぇ……」

 このわたくしが動揺しまくって、まともに顔を上げられない。
 ここは天国なのかと思うほど毎日が満たされ幸せなのだけれども、今までとのギャップが激しくてわたくしのオリハルコン並のメンタルでも衝撃が大きいのだ。
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