BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
4.それはメガネ攻めと健気受けですね

1.

 ジーニアは医師から定期的な診察を受けていた。その医師がうーんと難しい顔で唸っている。そして診察に付き合っているのがなぜかクラレンス。今も、少し離れた場所で、というよりはいつものソファで診察が終わるのを待っていた。

「あの、どうかしましたか?」
 医師の唸り方は、それはもうジーニアを不安にさせるようなものだった。

「あ、いえ。少し気になりましたので」

「何が、気になると言うのだ?」
 すたすたとソファの方から寝台に向かって歩いてくるクラレンスに気付いたジーニアは、診察のためにずらした服をいそいそと着直した。クラレンスの圧力に負けている医師は、おずおずと言葉を続ける。

「治りが遅いのです」

「治りが遅い?」
 クラレンスは医師の言葉をそのまま繰り返した。それは、クラレンス自身も彼女の傷跡に薬を塗っていて思ったこと。だから、この医師が藪ではないのか、と疑ったこともある。だが、医師自らが「治りが遅い」と口にするということは、この医師が藪ではなくてきちんとした医師であり、さらにクラレンスが思っていたこともあながち嘘ではなかったということ。

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