BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「はい。本来であれば、もう少し傷口がくっついて、引き攣れや痛みも治まってきている頃なのですが。まだ、痛みますか?」
 医師が優しくジーニアに問えば、彼女もこくんと頷く。それはけして大げさなのではなくて、不意に痛みが襲ってくるのだ。
 医師は再びうーん、と唸った。
「とりあえず、こちらの薬を塗っておいてください。ですが、それでも治りが悪いようであれば、それはもう我々医師の手には負えません」

「職務を放棄する、とでも言うのか?」
 腕を組んで医師の話を聞いていたクラレンスが、冷たい視線で医師を見下ろした。

「ち、違います」
 焦った医師は大げさに手と首を振る。
「恐らく、恐らくですが。もしかしたら呪詛の類が含まれているのではないか、ということです」

「呪詛?」
 腕を組んだままクラレンスは眉根を寄せた。
「そうです。ただの怪我ではなく、呪詛が込められた怪我の場合、治りが遅かったり、そこから傷口が全身へ広がったりします。もちろん、我々の薬は効きません」
 うむ、とクラレンスは頷いた。
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