BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
『私は大したことは無い。お前はあいつを追え』

 胸元を苦しそうに抑えているクラレンスを心配そうに見つめながらも、護衛騎士に彼を託し、普段は頭脳派であるシリルが隠していた身体的能力を発揮する、という。

 ――ダメだ。かっこよすぎる。

 ジーニアはむくりと起きあがると、正座して「ぬぉぉおおおおっ」と悶えながら、頭頂を枕に刺した。

 ――いや、ちょっと待てよ。
 クラレンスが毒で胸を押さえるシーンは、この第二のシナリオの流れではない。むしろ、第三のシナリオの流れだ。

 では、クラレンスとシリルのシナリオを進めるための分岐とはなんだったのか。

 ――クラレンスが毒入りグラスを選んではダメなんだ……。

 そう、第二のシナリオをすすめるためには、グラスの中身を飲み干す前に毒入りに気付くこと。つまり、それを飲んではいけないということだ。
 ジーニアは寝台の上で胡坐をかいた。このシナリオを思い出すために。
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