BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに

3.

 ジーニアが連れていかれた先は、クラレンスの寝室であった。落ち着いたダークブラウンで統一された室内。天蓋付きの寝台に、見るからにふかふかのソファ。
 だがそれらをジーニアが感じる術は無い。

「ジーニア嬢」
 寝台にゆっくりと仰向けに寝かせられたジーニアは、じっとクラレンスから見下ろされていた。もちろんジーニアは、それにすら気付かない。
 彼女は今、一人で真っ暗な世界にいる。聞こえるのは、クラレンスの物悲しい声。

 ――クラレンス様……。どうしてそんな悲しい声をしているのかしら。

 彼が悲しいから、ジーニアも悲しくなるし不安にもなる。できることならば、この手を伸ばして「大丈夫、怖くない」と伝えてあげたい。

「ジーニア嬢、泣いているのか?」

 ――泣いている? 私が? 一体、なぜ……。

 目尻に触れる体温を感じた。そしてそれがジーニアの心を勇気づけてくれる。

 ――クラレンス様の手だわ。

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