BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 クラシリクラシリと目の保養を求めていたジーニアであったが、三月(みつき)も彼と共に時間を過ごしていると、情が沸いてくるし、信頼関係も生まれてくる。
 むしろ、クラレンスという人物がジーニアの心の支えになっていたといっても過言ではない程に。さらに、目の保養のクラシリも忘れてはならない。

 ――結局。クラシリクラシリと叫んで、クラレンス様から逃げていただけなのよね……。

 ジーニア自身も、クラレンスに対して何かしら沸き起こる気持ちはあった。だが、彼はシリルのものであると、そう思っていたのだ。
 クラレンスを助けたのも、自分の命を守るため。クラシリのためだったはずなのに――。

「ジーニア嬢……。私の声は聞こえているのか? 君に、口づけをしてもいいだろうか……」

 クラレンスはいつだってジーニアを気遣ってくれた。ジーニアを気にかけてくれた。そして、誰よりも優しく触れてくる。
 ジーニアは認めたくなかった。ジーニア自身が、クラレンスに惹かれ始めていることを。
 だからこそ、クラシリクラシリで誤魔化していたのだ。

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