BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「目の前にこんな美味しそうなものがあったら、いくらお兄さまのために準備したものであっても、早く食べたくなるに決まっているわ。ね、お母さま」

「そうね。トンプソン家の女性は、甘い物には目がないのよ、あなた。覚えておいてちょうだい。次は、ジーンの卒業祝いですから」
 それは娘の卒業祝いにもこのようにたくさんのケーキを準備しろ、と母親が父親に向かって言っているのだ。

「そうか。ジーンももう卒業か。時の流れとは、早いものだな」
 と、なぜかジェレミーが感慨深く耽っている。

「お兄さま、そういうのはもういいですから。早く食べましょう」
 ジーニアのその一言で、やっと家族はケーキに手を伸ばし始めた。ジーニアはケーキの甘さで口腔内を満たされながらも、やっと身体と意識が一つになったような感じがした。
 ケーキを食べながら、ジーニアがジーニアとして生を受ける前について、をゆっくりと思い出す。

 ジーニアの前の人は、ここではない世界の地球という惑星の日本という国にいた女性であった。無難に仕事をして趣味に没頭していたようだ。
 そして没頭していた趣味――。
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