BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ヘレナ。苦しい……」

「あ、ごめん、つい。嬉しくて」
 ヘレナがぱっと離れると、少しだけ曲がってしまったジーニアの制服のリボンをきゅっと整える。
「やだやだやだ、どうしよう。ほら、同志がいるってだけで嬉しくない? ほら、私、特に地雷は無いから。グレジェレでもジェレグレでもどっちでもいけるんだけど、ちょっとこう、ね。ああ、どうしよう。もう、授業なんて聞いている場合じゃない。ジーンと語りたい。語り合いたい」

「ヘレナ。気持ちはわかるけれど。私たちは今、学院に通う華の女子学生。とりあえず、今は教室へ向かいましょう」
 やっと昇降口に辿り着いた。靴を履き替えて、二人仲良く教室へと向かう。
 気もそぞろというのは、今のヘレナのことを指すのだろう。いつも落ち着いている彼女が、浮足立っているように見える。だが卒業を間近に控えた今、この教室にいる者たちはたいていそんな感じだ。
 今生の別れというわけでもないのに、どこかしんみりとしている雰囲気もある。旅立ちとはそんなものなのだろう。
< 32 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop