BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ああ、ヘレナ。私、緊張してきたわ」
 会場に向かいながら、ジーニアはつい心のうちを漏らしてしまった。

「大丈夫よ、ジーン。私がついているから」

 けしてGでLではない。ここにあるのは女の熱い友情である。BでLという魅力に捕らわれた女性同士の。

「いい? ジーン。わかっているとは思うけど。まず、あの方にあのグラスのものを飲ませてはだめよ」

「だけど、私。どれがどのグラスかっていうのを覚えていないのよ」

「大丈夫よ、私は覚えているから。とにかく、シリル様が持っているグラスの中身は安全なのよ」

「すごい、ヘレナ。よく覚えているわね。そうね、シリル様ね」
 ジーニアは頭の中でメモメモと呟く。
「あの扉をくぐったら、あの中は戦場なのよね。私が生きるか死ぬかですもの」

「ええ、だけど絶対にジーンは死なせない」
 そのヘレナの熱い思いだけでうるっと涙ぐんでしまいそうになる。だから、急に声をかけられて思わず全身を震わせてしまった。

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