BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに

3.

 そんな妄想、ではなく回想に耽っていると扉を叩く音がした。自分の部屋ではないけれど、とりあえず「はい」と返事をしてみるジーニア。誰がやってきたのかはわからないが、こちらに近づいてくる足音が聞こえてくる。しかも一人ではない。二人、だろうか。

「目が覚めたのか?」

 ――ひっ……。

 ジーニアは声の主に顔だけ向けると、息を飲んだ。

 ――クラレンス様とシリル様。まさしくクラシリ。なんで? どうして? っていうかここはどこ?
 ジーニアの頭の中は、破裂寸前である。クラシリが脳みその許容量を超え始めた。脳内の全てがクラシリクラシリクラシリクラシリで埋め尽くされ始めている。

「あの。ご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ありません」
 だが、ジーニアの口から出てきた言葉はそれだった。さすがに本人たちを目の前にして「クラシリィ!」と興奮するわけにはいかないだろう。当たり障りが無く、この状況で適切と思える言葉を選んだつもりでもあった。

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