BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――シリル様、ナイス。さすがシリル様。空気が読める男は違う。

 シリルの言葉にコクコクと頷いたジーニア。それを見たクラレンスは残念そうに彼女の手を解放した。
 そんな捨てられた子犬のような目で見ないで欲しい、とジーニアは思う。ジーニアの中の人の母性というものがくっと疼く。だが、そもそもクラレンスはスパダリ攻めであってワンコ系攻めではない。本来のシナリオとは違う流れになっていることから、どこかでキャラ崩壊が始まっているのだろうか。と、ジーニアは心の中で真剣に考えた。

「あの。このような恰好で申し訳ないのですが」
 と前置きをつけたジーニア。このような恰好というのは身体を起こすことができない状況。
「身体を起こそうとすると、背中が痛むのです」

「ああ。刺さったからな。あれが」

 不穏な言い方をするクラレンス。それをシリルがあきれ顔で眺めている。

「さ、刺さった? 何がですか?」

「矢、だな。君の背中から胸にかけて、ぷすっと貫通を……」

「え、えぇえええ」
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