BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――目、目が……。つぶれる……。
 くらいの笑顔のクラレンスである。助けを求めてシリルに視線を向ければ、シリルもニコニコと朗らかな笑顔を浮かべている。

 ――そこはシリル様が誘うところでしょ。誘い受け、どこにいったの……。

 とにかくジーニアの心は穏やかではない。助けを呼びたかった。この状況で呼べる助けといえば、ヘレナくらいだろうか。
「あの。いろいろとお尋ねしてもよろしいでしょうか」

「もちろんだ」
 クラレンスがジーニアの手を両手で包み込み、すりすりと愛でている。

「それから。その、手を放していただけると、助かります」

 クラレンスの瞳がキラリと輝いた。それは間違いなく「WHY?」と言っている。これほど「WHY?」が似合う男、他には知らない。

「クラレンス様。ジーニア嬢もお目覚めになられたばかり。このように腕を伸ばしていたら、疲れてしまうのでしょう」

< 55 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop