BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ええ、とても美味しいです」
 ケーキではなく兄の顔が。そしてぼんやりとグレアムの顔がその隣に見えたような気がした。

『美味しいか、グレイ』
 あーんと、フォークに乗せたケーキをグレアムの口に寄せるジェレミー。
『ええ。ですが、俺としてはこちらの方を味見したいのですが』
 と、ジェレミーの手を取るグレアムの姿が、見えたような気がした。そう、気がしただけ。

 尊い……。
 しかも、過去を思い出した途端、妄想も健在だった。喜ぶしかない。腐女子から妄想をとったら、ただの腐っていないただの女子だ。腐女子に妄想は不可欠。その妄想も鈍ってはいなかったことに安堵しかない。
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