悪役令嬢のはずなのに!?〜いつのまにか溺愛ルートに入ってたみたいです〜
パーティが開始されるまで
ティアナはスイーツを吟味していた。

初対面の場合、
挨拶は上位の者から声をかけるのがマナーだ。
公爵の後継者であるティアナに声を
かけられる者はほとんどいない。

周りには、お近づきになりたい
令嬢令息が集まっていたがスイーツに夢中な
ティアナは気付いていなかった。

ふいに王子入場のアナウンスが流れた。

参加者たちは一斉に頭を下げる。
ちらっと瞳を上げてみると

輝くような黄金色の髪をなびかせて
透明感ある黄金色の瞳の男の子が颯爽と現れた。
斜め後ろには同じ髪色と瞳を持つ少し幼い男の子もいる。


第一王子 現6歳
シリウス=アルストレア=ライトロード

第二王子 現4歳
キース=アルストレア=ライトロード

二人とも『アリスと光の魔法学院』の攻略者であり
シリウスは前世で唯一攻略した人だ。


シリウスの言葉に
下げていた頭を一斉に戻すと
乙女たちはポッと頬を赤く染めた。
美形な二人の王子に釘付けだ。
(私には可愛く見えるけど)

乾杯の挨拶を合図に
音楽隊によるクラシック生演奏が始まった。
ガーデンの雰囲気にあった春の訪れを告げる音色が響く。


王子達への挨拶は
爵位の高位順に一列に並び頭を下げて王子の声を待つ。
私は乾杯の挨拶が終わると共にそそくさと移動した。


最初に挨拶するのは、
グランデ公爵令息
レオン=グランデ 現6歳
黄金色の髪に切れ長のパープルアイ
将来有望な肩書を持ち、
乙女がポッとなる美形な彼も
もちろんゲームの攻略対象者の一人だ。


レオンがあいさつした次は私の番。

「ようこそ、クロウド公爵令嬢。」

「お初にお目にかかります。
 クロウド家長女、
 ティアナでございます。」
淑女教育で学んだカーテシーで挨拶をする。

「シリウス=アルストレアだ。
 クロウド公爵にはいつも助けられているよ。
 どうぞ、顔を上げて。」

シリウスを見上げると瞳が合い
心なしか目を見開かれた気がした。

「クロウド公爵が言っていた通りだ。
 凛とした百合の様だね。」

? 
金髪青瞳の私に"白"の要素はないんだけど・・
そう言うように教育されているのかな?

「ありがとうございます。」

とりあえず微笑んでお礼を伝えると
瞳がふるわせた気がする。

「ティアナ=クロウド・・」
シリウスのななめ後ろに立つ
キースがぼそっと呟いた。

「?」
首を傾げてキースを見ると

「あ、えと、、キース=アルストレア・・」
恥ずかしそうにシリウスの足に隠れた

くすっ
出会った時のギルを思い出し自然と笑みがこぼれる。

背の低いキースに合わせて少し屈んだ
「私の弟ギルベルトが殿下と同じ歳です。
 どうか仲良くして下さいませ。」
微笑むとキースはこくっと頷いてくれた。
恥ずかしいのか顔が赤くなっている。

まだまだ参加者の挨拶は終わらないだろう。
この長尺の列をこなす頃には慣れるかな。



挨拶をすませて
楽しみにしてたスイーツコーナーに移動する。

吟味して目星をつけていたスイーツをお皿に盛る。
食べたいスイーツがありすぎて
お皿はこんもりと盛り上がっている。

さすがに盛りすぎたかなぁ?
このお皿は品が無いように見える。
幸いにも、2番目に挨拶した
ティアナの周りにはまだ誰もいない。
今、移動すればこのてんこ盛りのお皿は
誰にも見られないだろう。

てんこ盛りのお皿を持って
足早にガーデンの奥へと移動した。



ガーデンの奥にある
個室の入口は通路の反対にある。
一番奥にある個室に向かった。
中に入ると・・
ベンチに寝転がる男の子がいた。

(え?)

人がいるとは思わず
ビクッと肩を上げた拍子に
お皿からピンクマカロンが落ちてしまった。

「あ!」
思わず声が出た。

「ん?」
私の声で目を覚ました男の子は起き上がり

転がったピンクのマカロンを拾うため
手を伸ばした私と瞳があった。

「・・・」

は、恥ずかしい!!!

とっさに
てんこ盛りスイーツを隠す。

勢いよく動かした拍子で
今度は黄色のマカロンが転がった。

「・・・・・・」
男の子は固まっている。

「お休みの邪魔をしてごめんなさい。」

観念した私は
てんこ盛りスイーツを前に出し

「・・お腹すかない?」

"心は乙女"の部分が出した窮余の策だった。
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