悪役令嬢のはずなのに!?〜いつのまにか溺愛ルートに入ってたみたいです〜

魔法学院の応援生

ティアナがパーティー会場に戻ると
王子への挨拶の行列は落ちついていた。

余韻に浸るティアナの顔はまだ赤い。

トレーを片手に乗せた給仕の側に行くと
ジュースが取りやすいように屈んでくれた。
トレーにはカラフルなシャンパングラスが並ぶ。
オレンジジュースを手に取った瞬間・・

ドンッ!!

ふわふわの茶色の髪をした女の子が
後ろからぶつかってきた。

「きゃっ」

手から離れたオレンジジュースが宙を舞い

パシャッ

オレンジジュースは私のスカートに広がった。

「あ、あ・・・」
じわじわと女の子の瞳に涙が溜まっていく。
「だ、大丈夫!」
私は女の子の腕をそっと掴み
「洗えばすぐ落ちるわ。
 よしよし、驚いたね。」
なだめる様に頭を撫でた。
・・中身大人だからね。

女の子が落ちついた所で
側に来てくれていた執事に女の子をお願いすると
「申し訳御座いません」
ジュースを持っていた
まだ若い給仕に頭をさげられた。
「気にしないで。
 私がぶつかってしまったんだもの。
 それに、洗えばすぐ落ちるわ。」
安心するようにと給仕に微笑んだ。

「失礼致します」
金髪につり目がちなパープルアイの男の子に
声を掛けられた。
後ろには若い護衛騎士が控えている。

「レオン=グランデです。」
左手を胸にあてパープルアイの
紳士な男の子が挨拶してくれた。
「ティアナ=クロウドです。」
私もスカートを両手で広げ頭を下げる。

クロウド家の後継者候補はギルベルトだが
まだ表向きに公表はしていない。
現状はレオンがグランデ家、私がクロウド家
時期公爵家後継者候補の第一継承権を持つ者となり
私達の立場は平等だ。

レオンが後ろに控える騎士に目配せした。
「アレン=サラマンと申します。
 ライトロード魔法学院から応援生として
 本日は護衛にあたらせて頂いております。」


ライトロード魔法学院では
早ければ14歳から任務に就くことができる。
次期後継者や騎士派閥の生徒は
長期休暇の合間に様々な任務に就き人脈を広げる。
高位貴族の次期後継者達も通う学院で
どれだけ高位派閥に懇意にしてもらえるかで
将来が決まるのだ。(THE コネ社会!)
授業を満了し資格を取得すれば
魔法も扱う許可が出る。

今日のガーデンパーティーは
姉妹学園の催しとあって積極的に
魔法学院の生徒を応援生として参加させている。
王国騎士団の配置を変え、王族以外の貴族は
懇意にしている派閥の生徒を護衛に就かせている。

学園生が"お茶会デビュー"するのと同じで
学院生にとっては"社会人デビュー"の場となるのだ。

ちなみに社交界デビューは16〜20歳が一般的。
社交界の任務に就くためには
自身の"社交会デビュー”を果たしてからとなるため
学院生のうちは任務に就ける機会は少ない。
そのため、このパーティーは
練習の場として重宝されている。


赤い髪を後ろに束ねた少年が
赤みがかった茶色の瞳でこちらを見た。

「グランデ様の命により
 クリーニング魔法を施しに
 参らせて頂きました。」

「!」

"魔法"という言葉に胸が高鳴る。
アレンに誘導されその場を後にした。
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