悪役令嬢のはずなのに!?〜いつのまにか溺愛ルートに入ってたみたいです〜

甘えん坊の第二王子

はぁー、疲れたぁーー

あれから王妃教育を終え
私は帰りの馬車への通路を通っていた


王妃はとても厳しい方で規律を重んじる。
王子は産まれるとすぐ乳母に預けられ
物心つく前から教育を受けるので
会う機会がほとんど無いそうだ。
たまにお茶を嗜むことはあるそうだが
会話に私情を挟むことはなくめったに笑わない。

シリウスからはそう聞いていたけど
前世大人の私としては見る目線が異なる。

王妃の重圧は重い。
国を背負う王子を育てるプレッシャー
威厳を保ち隙を見せられないプレッシャー。
王子を産んだ時、彼女はまだ21歳だったと聞く。
必死に努力して歯を食いしばって
戦ってきた人なんだと思う。

すごく厳しくてたくさん泣いてしまうけど
わたしは王妃を尊敬している。




「もう帰るの?」
通路でキースに会った。

「キース殿下」
キースは俯きがちに立っている。
目の下には濃いクマがあり
顔も心なしか青白く見える。

キースはここのところ不眠症気味だった。
原因はわからないが会う度にクマが濃くなり
今日もお茶の席でシリウスと心配していた。

(王妃のことは尊敬してるけど
子供をこの状況で一人にしてしまうのはなぁ・・)

護衛騎士にお願いして
キースと草原に出かけることにした。
王妃はすぐに許可をくれたが
キースの前には現れなかった。
シリウスは剣術の稽古中だったため
声を掛けるのは諦めた。


護衛と執事を引き連れてキースと草原へ向かった。

草原といっても場所は敷地内で
馬車を十分程走らせればすぐに着く。
草原にピクニックシートも敷いてもらい
護衛騎士と執事は下がらせた。

「鬼ごっこしよ。」

キースと草原を走り回り
お花をつんだり転がったりして過ごした。

「あー!疲れたぁ!」

そして、たくさん遊んだ後、
ピクニックシートの上に寝転がった。

身体が疲れたら寝れるんじゃないかと
思っていたがそううまくはいかず
眠いのに寝れないキースは
不機嫌にごろごろと身体を動かす。

王妃教育に草原のかけっこで
疲れた私の方がねむくなってきた・・

半分寝ぼけていた私は
抱き枕代わりにキースの頭を胸に抱きしめ
キースの腰を太ももで挟んで眠りについた。


10分程して目を覚ますと
キースは胸を触りながらすやすや眠っていた。

・・赤ちゃん返りって言うんだっけ?
キースの話を撫でながら
キースが起きるのを待った。




あれからキースは甘えん坊になり
抱っこを求めてくる様になった。

恥ずかしいのか
二人になる時だけだが、
ギュッと胸に飛び込んでくる。

少しでてきたかな?ってくらい
小さくて微妙な大きさだけど、
胸を触るとよく眠れるみたいで
王妃教育の後に
よく二人で草原に向かうようになった。

サラサラでくせっ毛な髪は
トイプードルのようで
いつもギュッと抱きしめながら
わしゃわしゃっと触ってしまう。


ある時、
草原でごろごろ転寝をしていると
寝ぼけてキースを呼び捨てで呼んでしまった。
あわてて訂正しようとしたら
「キースって呼んで」と甘えてくれた。



公な場所以外では
私たちは愛称で呼び合うようになった。
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