エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
「わたしマナーもわからないし、場違いじゃないかな」

天笠と梧桐では格が違いすぎる。

「そんな大したパーティーじゃないよ。政界の人達もちらほら来るけど、殆どが会社関連とお得意様だけだし」


政界と聞いてぎょっとする。ものすごく大したことあるではないか。

「パーティーの経験はない?」

「あるけど……どちらかというと、お父さんが会場の装飾を頼まれて裏方に回っちゃうタイプで、わたし自身が招待されることなんてないし、経験はあまりないの」

「ああ、わかる。天笠さんならそうだよな。遊びに行くといつも土にまみれているもんな」

慧さんはふはっと笑った。

「最後に行ったの高校生かも」

それも、内輪の小さなパーティーだった。

「そうか、じゃあドレスを新調しないとな。何色が似合うかな。せっだから、アクセサリーも母のデザインのものを借りてこよう」

「え?! ちょっとまって、わたし行くとは……」

「俺に同伴なしでひとりで参加しろって? 寂しいな」

慧さんは眉を垂らして訴える。

「それに出席している間、詩乃をひとりにしてしまうのかと思うと心配で心配で……母が主体のパーティーなのに、気もそぞろになりそうだな……」

大袈裟だ。
悩ましげなふりをする慧さんに、わたしは口を尖らせる。

「もう。慧さんはほんとずるい」

「俺とパートナーは嫌かな? 君が婚約者だというのに、俺が他の女性を誘っても?」

「いいえ……嫌だなんて……」

ちょっと拗ねながら伝えると、慧さんは目を細める。

「よし。決まりだ。コーディネートは俺にまかせて。詩乃はそのままでも充分可愛いけれど、気後れしないように、とびきり素敵に仕立ててみせるから」


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