Macaron Marriage
* * * *

 あれから一年。結婚は先だって言ってたくせに……苛立ちを隠せず、萌音は日本庭園の中にある竹のベンチに腰掛けていた。

 まぁでも確かに結婚とは言ってなかった。両家の初の顔合わせ。だから私は名前も知らない婚約者と、今日初めて対面することになるのだ。

 今日のためにと用意された淡いピンクの可愛らしい着物は、萌音をどん底へと突き落とす。

 あぁどうしよう……。なんの情報もないから怖くなる。何歳の人なのかな。年が近いと良いんだけど……とんでもないおじさんとかが現れたら正気でいられるかしら。清潔感のある人かな……まぁパパが受け入れてるくらいだし、変な人は来ないとは思うけど……でも……すごく悲しいよ。

 ふと空を見上げてると、眩しいくらいの青空が広がっている。

 六年前のあの日から、萌音は空を見上げるたびにロミオのことを思い出していた。

『お互いやりたいことがやれている未来だったら幸せだね』

 彼はそう言った。今の私、そしてこれからの私は、やりたいことをやれているのかな?

 その時だった。誰かがそばに立っているような気配を感じて顔を上げる。するとそこにはスーツ姿の背の高い男性が立っていた。

「あの……大丈夫ですか? 具合が悪いのなら、お店の人を呼んで来ますが」

 男性は心配そうに萌音を見ていた。あぁ、空を見ながら額に触っていたから、具合が悪いって誤解させちゃったんだ。

 萌音は姿勢を正すと、その人に笑顔を向けた。
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