Macaron Marriage
 彼は萌音に向かって笑顔を見せる。

「もうその名前で呼ぶ人はいませんがね。お元気そうで何よりです」
「あの……どうしてここに……?」
「実はこの近くの結婚式場を任されているんです。しばらく仕事で日本を離れていたんですが、帰ってきたらドレスのお店がオープンしたと噂を聞きましてね。気になって調べてみたらあなたの名前を見つけて、もしかしたらと思って来てみたんです。というか来て良かった! また池上さんと再会出来ましたからね」

 萌音はその時になって門越しに話をしていたことに気付き、慌てて鍵を開ける。

「あっ、ご、ごめんなさい! 良かったら中に入りませんか?」
「挨拶をしようと思っただけだったのでお気になさらず。急でしたし、また今度にしましょう。というか、もしよろしければ今夜一緒に食事とかどうですか? うちの式場、農園レストランも経営してるです」

 農園という言葉を聞いて、カフェでの会話を思い出す。確か農業にも興味を持ってるって言ってたっけ。そのことだろうか。

「ぜ、是非伺いたいです!」
「よし、決まり。じゃあ夕方迎えに来ますね」
「わかりました!」

 手を振って歩き去る姿を見ながら、萌音は懐かしいときめきを感じていた。
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