Macaron Marriage
 成長した彼女をずっと想像していた。翔の頭の中では、最後に会ったあの日の着物姿のままだったから。それが目の前で、あの夏の夜よりも長い時間お喋りを楽しんでいるなんて。

 きっとあの夏の日から、俺の好みのタイプは変わっていないんだろうな。可愛い子とか優しい子とかじゃなくて、《《萌音》》がいいんだ。こんなに誰かのことを知りたくて胸が苦しくなるのは彼女だけだった。

 何もしなくたって、いつかは萌音は俺のものになる。そう思うと安心してフランスにも送り出せたのだ。

 そして今日再会した彼女に、思わず心を奪われた。特別素晴らしい格好をしていたわけじゃない。でも彼女から(ほとばし)るオーラが眩しくて、今やりたいことを楽しんでいることが伝わって来て、そんな彼女がとてもキレイだと感じた。

 懐かしさから食事に誘ってみたが、話しているともっと一緒にいたくなる。そんな魅力が彼女にはあった。

「このままでも、八ヶ月後にはめでたく結婚だもんな。でもびっくりするだろうなぁ、萌音ちゃん。まさかずっと知るのを避けて来た婚約者が、仲良しの店長だぞ。きっと交際ゼロ日婚でも上手く行くこと間違いなしだな!」

 元基がケラケラ笑いながら言うと、翔は突然深妙な顔になる。
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