Macaron Marriage
「それはそうと、先輩と池上さんってどういう関係なんですか? さっきは仲良さそうに手を繋いで登場したし」
「うん? まぁいろいろあるんだよね。でも……根本は上野と一緒かな。ずっと一緒にいたいって初めて思えた人なんだ」
「えっ、じゃあ付き合ってるんですか?」
「ううん、これから言おうと思ってる」

 波斗は目を点にして翔を見つめる。

「あはは、俺にも事情があるんだよ。でも大丈夫。ちゃんとハッピーエンドになるから」
「……まぁ先輩のことだから大丈夫だとは思うけど、それにしたって仲良さそうでしたよね。いつ頃知り合ったんですか?」
「んー……」

 翔は少し言い淀むが、そこは話しても良いと判断したらしい。

「実はね、俺が中学三年生の時にここで会ってるんだ」
「中学三年生⁈ そんな前から⁈」
「そう。でも彼女はたぶん気付いてないんじゃないかなぁ。だから彼女の中では、俺と出会ったのは大学生の時って思ってるみたいだよ」
「……そのこと伝えないんですか?」
「いや、そろそろ言おうかなぁって思ってるよ。だってその方が、ロマンチックじゃない?」
「……先輩って昔からそういうところありますよね。ほら、健がよく星座にまつわる神話を話すのを、やけに真剣に聞いてたし」
「そうそう。大崎って神話について詳しかったからさ、面白かったんだよね。懐かしいなぁ」

 翔は過去を懐古するように、天井をうっとりと見つめる。

 その時に萌音と紗世が戻って来たため、翔と波斗はふっと口を閉ざす。

 波斗はすぐに立ち上がって紗世の元へ駆け寄ると、彼女の髪をそっと撫でながら様子を窺うように顔を覗き込む。

 そんな二人のやり取りを見ながら、萌音はどこか寂しそうな表情を浮かべたような気がした。

 どうしたんだろう……翔の胸がざわつく。

 しかし声をかける前に萌音が二人に座るよう促したため、それ以上聞くことは出来なかった。
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