Macaron Marriage

「えぇ、ちょっと。内容は秘密ですけど……でも一つだけポロッと言っちゃうなら、気持ちを伝えるなら今がチャンスかもっていうことかしら」

 それから紗世は波斗の手を自分の腹部へ誘導すると、二人は顔を合わせて微笑み合う。

「気持ちは口にしないと伝わらないし、池上さんの場合はしがらみがあるようですからね……それが緩んでいる今がチャンスですよ」

 その時ちょうど駅に着き、二人は車から降りた。そして窓越しに頭を下げると、そのまま駅の改札の中へと消えていった。

 残された翔は運転席の背もたれに体を預け、紗世の言葉をじっくりと頭で考える。

 どんな話をしたのかはわからないが、今がチャンスと言っていた。それは彼女の気持ちが俺に向いていると言うことなのだろうか……。

 その時ふと翔の視界に、空に大きく輝く月が目に入った。そしてあることを思いつく。

 よし、善は急げだ。あの作戦で行こう。

 翔は興奮気味にアクセルを吹かすと、急いで家に向かって車を発進させた。
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