Macaron Marriage
* * * *

 キスってこんなに気持ちがいいなんて知らなかった……ぼんやりとする頭の中で萌音はそう思った。

 翔がリードをしながら進むキスは、ただお互いを求め合うだけの時もあれば、舌を絡め合って貪るような熱いキスの時もある。翔の舌が萌音の歯や唇をなぞっていく感覚は、とても魅惑的だった。

「萌音さん……愛してます……」

 翔の声が耳に届いた瞬間、萌音は彼の顔を両手で挟んで動きを止める。お互い顔を上気させ、呼吸も荒くなっていた。

「付き合うなら……敬語はやめませんか……? 《《私も》》そのままの翔さんを受け止めたいです……」

 驚いたように目を見開いた翔は、嬉しそうに萌音の唇に吸い付く。

「その代わり《《萌音》》も敬語はやめるんだよ、いい?」

 突然名前を呼び捨てにされた途端、頬が熱くなって、体の奥の方が疼くのを感じる。

「うん……わかった……」

 あぁ、これが好きな人と結ばれるってことなんだ。彼の一つ一つの仕草が愛しくて、私だけのものにしてしまいたくなる。

 何度も執拗にキスをしてきた翔の唇が、首元にキスを繰り返す。その間に彼の手がパジャマのボタンを外していることに気付いた。ダメだと思うのに、気持ちよさに抵抗を忘れていまっていた。

 パジャマの前がはだけ、ブラジャーが露わになる。翔はその胸に優しく触れた後、胸元に何度も小鳥のようなキスをしていくと、突然萌音の体がビクッと震えてた。

「か、翔さん……⁈」

 翔の唇が萌音の胸の頂をそっと口に含む。そしつ何度も舐るようなキスをすると、萌音の体が小刻みに震え始める。

「だ、ダメですって……」
「《《萌音》》、敬語はやめようか。出来なければ、このままキスは続くよ。どうする?」

 翔の唇が反対の胸に移動し、同じように刺激を与えていく。あまりの気持ちよさに萌音の体は大きく弓形になる。

「わ、わかった……お願いだからもうお終いにして……」

 息も絶え絶えに言うと、翔は満足そうな笑顔を浮かべてから起き上がると、再び萌音の唇にキスをする。

「うん、大満足。やっと萌音が俺のものになったんだ、まぁ正解には八ヶ月間だけだけどね」

 翔の言葉が萌音の心に突き刺さる。やっぱり翔さんが好き……翔さんのそばにいたい……結ばれると更に欲張りになる自分からがいるの。八ヶ月後、ちゃんとお別れ出来るのかしら……そんな自信ない。

「そんな顔しないで。まだ時間はあるんだから。八ヶ月、めいっぱい楽しもう。俺も萌音を愛し尽くすから」

 萌音のパジャマのボタンを留めながら、翔は優しく語りかける。再びキスが降ってきたかと思うと、萌音は眠りの世界に誘われていった。
< 80 / 130 >

この作品をシェア

pagetop