Macaron Marriage

9 恋人同士の朝

 誰かが髪を撫でている……なんて温かくて優しい手かしら……。しかも今日の枕はちょっと硬め?

 そんなことをぼんやりと考えながら目を覚ますと、萌音の顔の目の前で翔が満面の笑みを浮かべていた。

「おはよう、萌音」
「か、か、か、翔さん⁈ どうしてここに⁈」
「ん? だって昨日の夜に言ったじゃない。今夜はいっぱいキスしようって。まぁ気付いたら夜が明けてたけど」

 そう言われた瞬間、昨夜のことが思い出されて萌音は顔を真っ赤にすると、パッと起き上がり体を隠すように自らを両手で抱きしめる。

「……キスだけって言ったのに……」
「だからキスだけだったでしょ? 悪い男だったら、そんなんじゃ済んでないよ」
「……翔さんがこんなにエッチな人だと思わなかった……」
「好きな子を前にしたら、男なんてそんなものだよ。それともエッチな俺は嫌?」

 翔の手がゆっくりと伸びて、萌音の頬に触れる。それだけで胸がキュンとなって、翔の顔が近付いてくるとどこか期待してしまう自分もいた。

 こんなことをしていたら後戻り出来なくなりそうで怖い……徐々に唇が近付き、触れそうになったその時だった。

「萌音さ〜ん、おはようございま〜す!」

 華子が爽やかな笑みを浮かべながら、部屋のドアを勢いよく押し開けて入ってくる。

「まだ起きていらっしゃらなかったから、珍しく寝坊されたんですね!」

 そのまま窓の方へ向かいカーテンを開けると、部屋の中には眩しいほどの朝日が差しこんだため、萌音と翔は思わず目を瞑る。

「さぁ、では朝ごはんの準備でも……って、あらっ⁈ どうして由利さんがここに……」

 そこまで口にしてから、華子の中でいろいろなピースが繋がったようで、顔を真っ赤にしながら口元を両手で押さえる。

「あらやだ! 二人で迎える初めての朝に、私ったら何を野暮なことをしちゃっているんでしょう!」
「ち、違うの! 昨日はただ……」
「いいんですよ! 萌音さんの言いたいことはわかってますから。とりあえずお二人の朝食を準備しなきゃ! 夕飯にはお赤飯でも炊きましょうかねぇ。あら、忙しくなりそう!」

 明らかに別のことと勘違いをしている華子に気付き、慌てて訂正をしようとする。しかし華子の独特な流れに持って行かれてしまい、華子は勘違いをしたまま部屋から出て行ってしまった。
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