Macaron Marriage
「あはは、華子さんって本当に面白いなぁ」
「翔さん⁈ だって勘違いされちゃってますよ⁈」
「まぁいいんじゃない? だってもう付き合い始めたわけだし。俺は何も困らないよ」
「だってお父様のお仕事に影響が……」
「あぁ、あれは学生の頃の話。さすがにこの年齢になったら言われないよ」

 寝起きなのにこんなにも爽やかな笑顔ができるなんて……うっとりと見惚れてから萌音はハッとする。昨夜は夜だからすっぴんでも気にならなかったが、今は朝だし全て丸見えだったのだ。

 慌てて布団で顔を隠そうとするが、その布団を翔に奪われてしまい、両手で顔を覆うしか出来なかった。

「朝から元気だね。すっぴんの萌音もすごく可愛いよ」

 それから翔は萌音の耳元に唇を寄せると、
「毎朝見ていたいくらいにね」
と囁いたため、思わず腰を抜かしそうになってしまう。

 そこをすかさず翔の手が伸びて抱き寄せたので、更に体が密着する。そのため萌音は心臓が早鐘のように打ち続けるのを感じていた。

「あはは。萌音ってば緊張してるの?」
「……だ、だって……男の人とこういう距離間になるのって初めてで……」
「いいね、萌音の初めてが俺との記憶で埋まっていくんだ」

 それって一生忘れられない思い出になったりする? そうしたら私はこの先どうなっちゃうんだろう……あなたを忘れられずに、不完全燃焼な想いを抱えて生きていくことにならない?

 自分の気持ちに正直になったのはいいけど、罪悪感が増していくのは苦しい。この選択は間違っていなかったのだろうか……。

「そういえば萌音は定休日とかある?」
「えっと……今は仕事以外にやることもないし、休みたい時に休んでいますよ」
「また敬語になってる。じゃあさ、これからは二人の休みを合わせない? 俺も休みをとか決めずに仕事をする癖があって、どうせなら萌音と一緒に休んで出かけたりしたいなって思うんだ」
「……それってデート……みたいな感じ?」
「感じじゃなくて、紛れもなくデートのお誘いなんだけど」

 翔は萌音の頭を撫でると、にっこりと微笑んだ。
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