誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 宗次さんや住み込みの料理人の人たちは、先ほどの本邸に部屋があるらしいが、私にはこの離れがあたえられた。
 叔母たちは私の顔を見ることを極端に減らしたかったのかもしれない。しかし、私としてもそれはとてもありがたかった。
 
案内をしてくれた宗次さんは、私よりも八つ年上で、代々この家に仕えてくれているらしく、私を迎えに来たのが彼のお父様で、この家すべてを仕切っているということを聞いた。
 
宗次さんを初め、働いている人たちは皆優しかったが、私と親しくするとどうやら叔母や円花からのあたりがきついことに気づいた。
 
 それを知ってしまえば、私から距離を取るしかない。誰もこの屋敷であのふたりに逆らうことなどできなかった。
 だから私は静かに、あたり障りなく仕事を淡々とこなし、終わればひとりで本を読んだりして過ごすしかなかった。
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