片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
「新婚話っていっても、大したことないよ?」
「またまた~。あ、でも仕事の後だと遅くなっちゃうし、休みの日がいいかな? 伊織さんに何か言われる?」
「一応聞いてみるけど、どっちでも大丈夫だと思うよ。ご飯は作り置きしておけばいいし」
「そっか、緋真ちゃんが毎日ご飯作ってるんだもんね。やっぱり結婚したら自由にできないかぁ」
「そうでもないよ。わりと自由にさせてもらってるし。ただ、私が作りたいだけで」

 私自身も結婚したら自由がなくなってしまうのではないかと漠然に思っていたが、意外とそんなことはない。伊織さんは仕事もプライベートも好きにしていいと言ってくれて、ありがたい限りだった。それでも念のため、事前に断りを入れるようにしているけれど。

 夕飯もできる限りで問題ないと言われているものの、私が作ってあげたいのだ。
 何とはなしに答えると、郁ちゃんがニヤニヤと口元を緩める。

「へえ、ラブラブなんだ~? 上手く行ってそうでよかった」
「うーん、どうだろう……」
「あれ? なになに、訳あり? 私でよかったら惚気でも愚痴でも聞くよ?」

 逆に聞きたいと言わんばかりに、郁ちゃんがどんと構える。

 彼女は見た目通り異性からもモテるタイプで、聞く限り学生時代から恋愛経験も豊富なほうだった。だから、ここ最近悩んでいるデリケートな相談にも乗ってくれるかもしれない。

 そんなことを考えていると、今度は心配そうに顔を覗き込まれた。

「でも、緋真ちゃん大丈夫? 結婚しても仕事変わらずだし、無理してない? 昨日も料理動画アップしてるの見たよ~」
「大丈夫だよ。なるべく休みの日に作業してるし、結構楽しいから」
「頑張り屋さんだな~。ま、だから人気なんだよね、緋真先生は! 今日なんてこの後の授業貸し切りになってたし」
「それは関係ないよ。貸し切りなんて滅多にないんだし」

< 18 / 100 >

この作品をシェア

pagetop