片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
お見合いということで今日は特別めかし込んではいるが、普段の私はひどく地味だ。極端に露出を控えたカジュアルな服ばかり着て、女性らしさのカケラもない。
外見だけでいえばスタイルも顔立ちも作りが良いと言われることはあるものの、外から見えない“ある問題”が自信のない自分を作っている。そしてこの件については、彼にも事前に話す必要があると判断し、一呼吸おいた。
「……私、服の上からではわかりませんが、背中に大きな火傷の痕があるんです。小さい頃に事故で負ったみたいで」
「事故?」
「熱湯を被ったのが原因らしいのですが、あまりにも深い火傷だったから今も残っていて……」
背中の広範囲に広がる、痣のような痕と盛り上がった皮膚。物心つく頃には既にあったものであまり気にしてはいなかったが、思春期を迎えたころから次第にコンプレックスへと変わっていった。
揶揄されたり哀れみの目で見られたりすることが辛く、小中学生のときはプールにも入らなかったし、大人になってからは背中が見える服を着ないことを徹底しているうちに、お洒落からも遠ざかってしまった。
それは恋愛にも顕著に影響していて、大学生で初めてできた恋人と勇気を出して夜を共にした時、背中を見られて完全に“萎えられて”しまったのだ。ちなみにそこから彼氏はいない。
だからこそ、この痕を隠して縁談を進めることはできない。
そんな思いで、正直に打ち明けたのだが――
「……それで?」
伊織さんは、真顔で小首を傾げる。
「それでって……。気持ち悪くないですか? 結婚となれば、その、見ないわけにもいかないですし、わざわざコンプレックスのある相手を選ばなくても……」
って、何を言っているんだろう。
自ら口走ったデリケートな発言に、心の中で突っ込みを入れる。
外見だけでいえばスタイルも顔立ちも作りが良いと言われることはあるものの、外から見えない“ある問題”が自信のない自分を作っている。そしてこの件については、彼にも事前に話す必要があると判断し、一呼吸おいた。
「……私、服の上からではわかりませんが、背中に大きな火傷の痕があるんです。小さい頃に事故で負ったみたいで」
「事故?」
「熱湯を被ったのが原因らしいのですが、あまりにも深い火傷だったから今も残っていて……」
背中の広範囲に広がる、痣のような痕と盛り上がった皮膚。物心つく頃には既にあったものであまり気にしてはいなかったが、思春期を迎えたころから次第にコンプレックスへと変わっていった。
揶揄されたり哀れみの目で見られたりすることが辛く、小中学生のときはプールにも入らなかったし、大人になってからは背中が見える服を着ないことを徹底しているうちに、お洒落からも遠ざかってしまった。
それは恋愛にも顕著に影響していて、大学生で初めてできた恋人と勇気を出して夜を共にした時、背中を見られて完全に“萎えられて”しまったのだ。ちなみにそこから彼氏はいない。
だからこそ、この痕を隠して縁談を進めることはできない。
そんな思いで、正直に打ち明けたのだが――
「……それで?」
伊織さんは、真顔で小首を傾げる。
「それでって……。気持ち悪くないですか? 結婚となれば、その、見ないわけにもいかないですし、わざわざコンプレックスのある相手を選ばなくても……」
って、何を言っているんだろう。
自ら口走ったデリケートな発言に、心の中で突っ込みを入れる。