BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
「私も今日、奏太のお墓参りに行ったんです。昨日が命日でしたので、今日ならあの人にも家族にも会うことはないだろうと思って。でも・・・会ってしまった」
「ご主人に?」
「ええ。主人にも、新しい奥さんにも。奏太の兄妹にも」
兄妹?
再婚した奥さんとの間の子供。

「かわいい女の子がいて・・・3歳なんですって。『おばちゃん誰?』って聞くんですよ。そうしたら奥さんが、『パパと、奏太お兄ちゃんのお友達よ』って答えたの」
そう言って、ポロポロと涙を流す彼女。

海に入って行った彼女の気持ちがやっと分かった。
奏太は彼女の心の支えだったはず、今日はそれを奪われた気になったんだろう。

「分かってはいるんです。あの人や奥さんがちゃんと奏太を供養していてくれることを感謝しないといけない。頭では分かっているんです。でも・・・」
言葉を詰まらせる。
「大丈夫。奏太くんのお母さんはあなたですよ。俺は知っています。その為にも、生きなくちゃ。あなたが命を絶つことを奏太くんは望んではいません」

「ありがとうございます。コーヒー入れますね。それとも、ビールが良いですか?」
涙を手でぬぐうと彼女は立ち上がる。
「ビールをいただきます」
なんだか飲まないとやっていられない気分だ。
いざとなればタクシーで帰ればいい。
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