モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
5
「ハルカ。お前、それを……」
「元の世界へ帰れる方法、あったんですね。それも、聖女だけじゃなく」
私は、グレゴールをキッと見すえた。
「見損ないました! 嘘をついて選択肢を奪って、私を側妃に仕立てようだなんて!」
「違う!」
グレゴールは、激しくかぶりを振った。
「最初は、本当に知らなかったんだ。巻き込まれ召喚の事例自体は調べたが、元に戻す方法までは載っていなかった……」
私が、ついさっき読んだ事例のことだろう。でも、と私は唇を噛みしめた。
「その後で、見つけたんですよね? 方法。どうして、教えてくれなかったんです。マキさんにまで、口止めして!」
「……それは」
グレゴールが、黙り込む。私は、本を力任せに床へ投げつけた。
「グレゴール様は、最低です! この前、私の将来を色々考えてくださっていたのは、見せかけですか。やっぱりあなたは、仕事しか頭に無い人です!」
私は、はあはあと肩で息をしながら彼をにらみつけた。
「それとも、私欲ですか。この前は否定されていたけれど、案外カロリーネ様の推測が当たっているんじゃないですか。私を利用して、出世したいのでしょう!」
頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。信じていたのに、好きだったのに。彼は、私を利用することしか考えていなかったのか……。
「誤解だ」
激高する私とは対照的に、グレゴールの声音は静かだった。
「俺は、誰かを利用して出世しようなどとは思わない。国のこと、国王陛下やクリスティアン殿下のことを思っているのは事実だが、そのために異世界から呼び寄せてしまったお前のことを利用しようなどとは、考えていない」
「でも、方法を見つけた後も黙っておられた」
「そうだな。その点は、深く謝罪する」
神妙に頷いた後、グレゴールは信じられない行動に出た。彼は、私の前に跪いたのだ。
「確かに俺は、お前たちを召喚した後、元の世界へ帰す方法を調べまくった。マキ殿が、任務終了後は帰りたいと、割と強硬に主張されていたということもあった。だが、一番の理由はお前だ。手違いで一緒に呼ばれたお前を、いつまでも留め置くのは気の毒だと思ったのだ。そして、ついにこの本でその方法を見つけた」
「だったら、なぜ……」
グレゴールは、再び立ち上がった。彼は、私の両肩にそっと手を置くと、私を見つめた。
「元の世界へ、帰れる。実は俺はお前に、何度もそう言おうとした。それなのに、言えなかった。それは……」
その時、廊下でバタバタと足音がした。あっという間に、近付いて来る。
「旦那様! 大変でございます!」
叫びながら姿を現したのは、ヘルマンだった。いつも温和な彼には珍しく、血相を変えている。
「ああ、ハルカ様もご一緒でしたか。申し訳ありません。ですが……」
ヘルマンは、グレゴールに何やら耳打ちをした。グレゴールは、さっと顔色を変えると、私を見た。
「国王陛下から、緊急のお呼びがかかった。すまないが、話は後だ」
「あ……」
グレゴールは、何と言おうとしていたのだろう。気にはなるが、国王陛下の呼び出しとなれば、行かざるを得ないだろう。立ち尽くす私を後に、グレゴールは部屋を飛び出して行ったのだった。
「元の世界へ帰れる方法、あったんですね。それも、聖女だけじゃなく」
私は、グレゴールをキッと見すえた。
「見損ないました! 嘘をついて選択肢を奪って、私を側妃に仕立てようだなんて!」
「違う!」
グレゴールは、激しくかぶりを振った。
「最初は、本当に知らなかったんだ。巻き込まれ召喚の事例自体は調べたが、元に戻す方法までは載っていなかった……」
私が、ついさっき読んだ事例のことだろう。でも、と私は唇を噛みしめた。
「その後で、見つけたんですよね? 方法。どうして、教えてくれなかったんです。マキさんにまで、口止めして!」
「……それは」
グレゴールが、黙り込む。私は、本を力任せに床へ投げつけた。
「グレゴール様は、最低です! この前、私の将来を色々考えてくださっていたのは、見せかけですか。やっぱりあなたは、仕事しか頭に無い人です!」
私は、はあはあと肩で息をしながら彼をにらみつけた。
「それとも、私欲ですか。この前は否定されていたけれど、案外カロリーネ様の推測が当たっているんじゃないですか。私を利用して、出世したいのでしょう!」
頭の中が、ぐちゃぐちゃだ。信じていたのに、好きだったのに。彼は、私を利用することしか考えていなかったのか……。
「誤解だ」
激高する私とは対照的に、グレゴールの声音は静かだった。
「俺は、誰かを利用して出世しようなどとは思わない。国のこと、国王陛下やクリスティアン殿下のことを思っているのは事実だが、そのために異世界から呼び寄せてしまったお前のことを利用しようなどとは、考えていない」
「でも、方法を見つけた後も黙っておられた」
「そうだな。その点は、深く謝罪する」
神妙に頷いた後、グレゴールは信じられない行動に出た。彼は、私の前に跪いたのだ。
「確かに俺は、お前たちを召喚した後、元の世界へ帰す方法を調べまくった。マキ殿が、任務終了後は帰りたいと、割と強硬に主張されていたということもあった。だが、一番の理由はお前だ。手違いで一緒に呼ばれたお前を、いつまでも留め置くのは気の毒だと思ったのだ。そして、ついにこの本でその方法を見つけた」
「だったら、なぜ……」
グレゴールは、再び立ち上がった。彼は、私の両肩にそっと手を置くと、私を見つめた。
「元の世界へ、帰れる。実は俺はお前に、何度もそう言おうとした。それなのに、言えなかった。それは……」
その時、廊下でバタバタと足音がした。あっという間に、近付いて来る。
「旦那様! 大変でございます!」
叫びながら姿を現したのは、ヘルマンだった。いつも温和な彼には珍しく、血相を変えている。
「ああ、ハルカ様もご一緒でしたか。申し訳ありません。ですが……」
ヘルマンは、グレゴールに何やら耳打ちをした。グレゴールは、さっと顔色を変えると、私を見た。
「国王陛下から、緊急のお呼びがかかった。すまないが、話は後だ」
「あ……」
グレゴールは、何と言おうとしていたのだろう。気にはなるが、国王陛下の呼び出しとなれば、行かざるを得ないだろう。立ち尽くす私を後に、グレゴールは部屋を飛び出して行ったのだった。