モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
6
それから、三日間が経過した。グレゴールは、あれきり屋敷へ戻って来ない。恐らくは、相当大きな問題が勃発したものと思われた。
私はといえば、自室で悶々と過ごしていた。もう一度書斎へ行って、本を読めば、日本へ戻る方法はわかるだろう。だがグレゴールとの話も途中である以上、そうする気にもなれなかった。
ベッドに腰かけてぼんやりしていると、ノックの音がした。メルセデスだった。何だか、神妙な顔をしている。
「気分はどう?」
私は、うつむいた。どう答えるべきか、自分でも判断がつかなかったのだ。するとメルセデスは、近付いて来て私の隣に腰を下ろした。
「グレゴールから、聞いたわ。元の世界へ戻る方法があるそうね。それは、私も知らなかったわ」
メルセデスの眼差しは、真摯だった。知らなかったというのは、本当だろう。
「グレゴール、謝っていたわ。きちんと説明すべきなのに、なかなか家へ帰れず申し訳ないと。でもね、あの子も今大変なのよ。実は、クリスティアン殿下のご婚約者・マルガレータ王女が、イルディリアへ来られる途中で何者かにさらわれたの。ちょうど、両国の国境付近よ」
「ええ!?」
私は、思わず顔を上げた。さすがに、そこまでの事態が起きていたとは思わなかった。そういえば、イルディリアへ向かって出発したとは聞いた。到着はまだだろうかと思っていたのだが。
「一体、誰が……」
「まだわかっていません。けれどロスキラ国内では、イルディリア側の仕業ではという疑惑が浮上しているの。何せ我が国とロスキラは、それは長い間、敵対関係でしたからね」
そんな、と私は眉をひそめた。
「ロスキラとの関係改善は、アウグスト五世陛下、クリスティアン殿下の悲願ですからね。何としても、早急に濡れ衣を晴らす必要があるわ。それでグレゴールは今、奮闘しているのよ」
それはそうだろう、と私は納得した。
「王女様、ご無事でいらっしゃるといいですね。早く見つかっていただきたいです」
ええ、とメルセデスは頷いた。
「そこでイルディリアは、王女様の捜索部隊を結成したわ。ベネディクト殿下が指揮を執られて、ロスキラ方面へ向けて出発されたそうよ」
メルセデスは、そこで私をチラと見た。
「ま、この件について私たちがあれこれ悩んだところで、どうしようも無いわ。……ところで問題は、ハルカ、あなたのことよ」
私はうつむいた。
「以前の世界へ戻れる方法があるとわかったわけだけれど……。ハルカ、あなたはどうしたい? 戻るのか、残るのか」
それはこの三日間、私が自問自答し続けていたことだった。メルセデスが、淡々と続ける。
「残った場合でも、無理に側妃を目指す必要は無いわ。グレゴールはあなたに、側妃以外の道も示したと言っていた。それに、こう言っては何だけれど、マルガレータ王女にもしものことがあれば、正妃がいない以上、側妃どころではなくなるわ」
私は、迷った。急に私がいなくなって、家族は心配したことだろう。それを考えれば、戻るべきなのだろうが……。
私は、日本にいた頃の自分を思い出していた。常に『あざかわテク』を駆使して、男性からは人気があったけれど、演じ続けるのは結構きつかった。気にしないフリをしていたけれど、女性から嫌われるのも辛かったし……。
(じゃあ、戻って、『あざかわ』止めて、今みたいに素の自分で生きてみる?)
それもそれで、不安だった。本来の自分が受け入れられたのは、このイルディリア王国だからこそだ。やっぱり日本では、『あざかわ』キャラがウケるという現実がある……。
私は、メルセデスの瞳を見返して告げた。
「私、残りたいです」
メルセデスが、大きく目を見開く。
私はといえば、自室で悶々と過ごしていた。もう一度書斎へ行って、本を読めば、日本へ戻る方法はわかるだろう。だがグレゴールとの話も途中である以上、そうする気にもなれなかった。
ベッドに腰かけてぼんやりしていると、ノックの音がした。メルセデスだった。何だか、神妙な顔をしている。
「気分はどう?」
私は、うつむいた。どう答えるべきか、自分でも判断がつかなかったのだ。するとメルセデスは、近付いて来て私の隣に腰を下ろした。
「グレゴールから、聞いたわ。元の世界へ戻る方法があるそうね。それは、私も知らなかったわ」
メルセデスの眼差しは、真摯だった。知らなかったというのは、本当だろう。
「グレゴール、謝っていたわ。きちんと説明すべきなのに、なかなか家へ帰れず申し訳ないと。でもね、あの子も今大変なのよ。実は、クリスティアン殿下のご婚約者・マルガレータ王女が、イルディリアへ来られる途中で何者かにさらわれたの。ちょうど、両国の国境付近よ」
「ええ!?」
私は、思わず顔を上げた。さすがに、そこまでの事態が起きていたとは思わなかった。そういえば、イルディリアへ向かって出発したとは聞いた。到着はまだだろうかと思っていたのだが。
「一体、誰が……」
「まだわかっていません。けれどロスキラ国内では、イルディリア側の仕業ではという疑惑が浮上しているの。何せ我が国とロスキラは、それは長い間、敵対関係でしたからね」
そんな、と私は眉をひそめた。
「ロスキラとの関係改善は、アウグスト五世陛下、クリスティアン殿下の悲願ですからね。何としても、早急に濡れ衣を晴らす必要があるわ。それでグレゴールは今、奮闘しているのよ」
それはそうだろう、と私は納得した。
「王女様、ご無事でいらっしゃるといいですね。早く見つかっていただきたいです」
ええ、とメルセデスは頷いた。
「そこでイルディリアは、王女様の捜索部隊を結成したわ。ベネディクト殿下が指揮を執られて、ロスキラ方面へ向けて出発されたそうよ」
メルセデスは、そこで私をチラと見た。
「ま、この件について私たちがあれこれ悩んだところで、どうしようも無いわ。……ところで問題は、ハルカ、あなたのことよ」
私はうつむいた。
「以前の世界へ戻れる方法があるとわかったわけだけれど……。ハルカ、あなたはどうしたい? 戻るのか、残るのか」
それはこの三日間、私が自問自答し続けていたことだった。メルセデスが、淡々と続ける。
「残った場合でも、無理に側妃を目指す必要は無いわ。グレゴールはあなたに、側妃以外の道も示したと言っていた。それに、こう言っては何だけれど、マルガレータ王女にもしものことがあれば、正妃がいない以上、側妃どころではなくなるわ」
私は、迷った。急に私がいなくなって、家族は心配したことだろう。それを考えれば、戻るべきなのだろうが……。
私は、日本にいた頃の自分を思い出していた。常に『あざかわテク』を駆使して、男性からは人気があったけれど、演じ続けるのは結構きつかった。気にしないフリをしていたけれど、女性から嫌われるのも辛かったし……。
(じゃあ、戻って、『あざかわ』止めて、今みたいに素の自分で生きてみる?)
それもそれで、不安だった。本来の自分が受け入れられたのは、このイルディリア王国だからこそだ。やっぱり日本では、『あざかわ』キャラがウケるという現実がある……。
私は、メルセデスの瞳を見返して告げた。
「私、残りたいです」
メルセデスが、大きく目を見開く。