モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
6
「お兄様!? 何をしてらっしゃるんです! 戦線を離れられたのですか!?」
カロリーネが、金切り声を上げる。一方のエマヌエルは、ふてくされたような態度だった。
「もう勝てる見込みなんて、無いだろ。父上にも、いい加減諦めてくださいって言いたいよ」
大きなため息をついた後、エマヌエルはふと、落ちていた本に目を留めた。
「何だ、これは……」
エマヌエルは本を拾い上げたが、カロリーネはそれをひったくった。
「お兄様に、判読できるわけがありませんでしょう。邪魔をしないでくださいませ。これから、この女を元の世界へ帰す儀式をするのですから!」
「何だと? 追い返す方法があったというのか!?」
エマヌエルは、眉を吊り上げた。
「だったら、なぜ早く知らせないんだ。僕らが大敗を喫したのは、聖女と聖獣たちのせいだろうが!」
そうか、と私は目を見張った。榎本さんと聖獣たちが、国王とクリスティアンを守ったから、イルディリアは勝利できたのだ。
「どうでもよろしいわよ、戦の勝敗なんて!」
開き直ったように、カロリーネがわめく。
「どうせお父様なんて、私を政治利用することしか、考えてらしゃらないんだから。クリスティアンの側妃になんてなりたくないと訴えても、耳を貸されなかったわ!」
「お前は……!」
エマヌエルはカッと気色ばんだが、ふと表情を和らげた。
「……まあ、今さら兄妹で争っても、どうしようもないな。この本を内緒にしていた件は、見逃してやろう。その代わり」
エマヌエルは、私をチラリと見た。私は、ぞっとした。彼の瞳には、ギラギラした欲望が宿っていたのだ。
「この女を帰すのを、遅らせろ」
「あら、そういうことですのね」
カロリーネが、にたりと笑う。まさか、と私は怯えた。
「どうぞ、お兄様。お好きなように、この娘でお遊びなさいませ。飽きた頃に、元の世界へ帰せばよろしいわ」
「グレゴールにも、逐一教えてやろう。大事なものを汚されて、あいつがどんな顔をするか見物だ」
「大事かはともかく……、それは面白そうですわね」
二人は、よく似たラベンダー色の瞳を見合わせている。浮かんでいるのは、共犯者の笑みだった。
私は、戦慄を覚えた。エマヌエルに犯されるだけでなく、それをグレゴールに知られるくらいなら、早く日本へ帰りたい。いや、死んだ方がマシだ。
「止めてください! 私、帰りますから。ですから、儀式を……」
私の必死の叫びも空しく、カロリーネは本を持って、さっさと地下室を出て行ってしまった。音を立てて、重い扉が閉まる。私は、エマヌエルと二人で取り残された。
「あ、あの……! お願いです。これを解いてもらえませんか? そしてできれば、別の場所で……」
私は、鎖をじゃらじゃらと動かした。もちろん、エマヌエルの言うなりになるつもりは無い。少しでも、時間稼ぎをしたかったのだ。だがエマヌエルは、上着を脱ぎ捨てると、早くも覆いかぶさってきた。
「そりゃ、柔らかいベッドで可愛がってあげたいのは、やまやまだけどね。僕も結構限界でさ。父上が戦なんぞおっぱじめたせいで、女の子と遊ぶどころじゃなかったし」
まるで、欲求不満の獣だ。自由な両手で押しのけようとするも、あっという間に捕らえられた。頭上でひとまとめに押さえつけられ、私は泣きそうになるのを必死に堪えた。
「ま、でも君のことは、最初から気に入ってたから。優しくしてやる……」
ドレスの胸元に、手がかかる。
カロリーネが、金切り声を上げる。一方のエマヌエルは、ふてくされたような態度だった。
「もう勝てる見込みなんて、無いだろ。父上にも、いい加減諦めてくださいって言いたいよ」
大きなため息をついた後、エマヌエルはふと、落ちていた本に目を留めた。
「何だ、これは……」
エマヌエルは本を拾い上げたが、カロリーネはそれをひったくった。
「お兄様に、判読できるわけがありませんでしょう。邪魔をしないでくださいませ。これから、この女を元の世界へ帰す儀式をするのですから!」
「何だと? 追い返す方法があったというのか!?」
エマヌエルは、眉を吊り上げた。
「だったら、なぜ早く知らせないんだ。僕らが大敗を喫したのは、聖女と聖獣たちのせいだろうが!」
そうか、と私は目を見張った。榎本さんと聖獣たちが、国王とクリスティアンを守ったから、イルディリアは勝利できたのだ。
「どうでもよろしいわよ、戦の勝敗なんて!」
開き直ったように、カロリーネがわめく。
「どうせお父様なんて、私を政治利用することしか、考えてらしゃらないんだから。クリスティアンの側妃になんてなりたくないと訴えても、耳を貸されなかったわ!」
「お前は……!」
エマヌエルはカッと気色ばんだが、ふと表情を和らげた。
「……まあ、今さら兄妹で争っても、どうしようもないな。この本を内緒にしていた件は、見逃してやろう。その代わり」
エマヌエルは、私をチラリと見た。私は、ぞっとした。彼の瞳には、ギラギラした欲望が宿っていたのだ。
「この女を帰すのを、遅らせろ」
「あら、そういうことですのね」
カロリーネが、にたりと笑う。まさか、と私は怯えた。
「どうぞ、お兄様。お好きなように、この娘でお遊びなさいませ。飽きた頃に、元の世界へ帰せばよろしいわ」
「グレゴールにも、逐一教えてやろう。大事なものを汚されて、あいつがどんな顔をするか見物だ」
「大事かはともかく……、それは面白そうですわね」
二人は、よく似たラベンダー色の瞳を見合わせている。浮かんでいるのは、共犯者の笑みだった。
私は、戦慄を覚えた。エマヌエルに犯されるだけでなく、それをグレゴールに知られるくらいなら、早く日本へ帰りたい。いや、死んだ方がマシだ。
「止めてください! 私、帰りますから。ですから、儀式を……」
私の必死の叫びも空しく、カロリーネは本を持って、さっさと地下室を出て行ってしまった。音を立てて、重い扉が閉まる。私は、エマヌエルと二人で取り残された。
「あ、あの……! お願いです。これを解いてもらえませんか? そしてできれば、別の場所で……」
私は、鎖をじゃらじゃらと動かした。もちろん、エマヌエルの言うなりになるつもりは無い。少しでも、時間稼ぎをしたかったのだ。だがエマヌエルは、上着を脱ぎ捨てると、早くも覆いかぶさってきた。
「そりゃ、柔らかいベッドで可愛がってあげたいのは、やまやまだけどね。僕も結構限界でさ。父上が戦なんぞおっぱじめたせいで、女の子と遊ぶどころじゃなかったし」
まるで、欲求不満の獣だ。自由な両手で押しのけようとするも、あっという間に捕らえられた。頭上でひとまとめに押さえつけられ、私は泣きそうになるのを必死に堪えた。
「ま、でも君のことは、最初から気に入ってたから。優しくしてやる……」
ドレスの胸元に、手がかかる。