浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「お客さん、困ります。マズかろうが美味しかろうが、食べたものの対価は当然支払ってもらわないと」
「レディ、それは違うな。マズいものにどうして支払う必要があるんだ?」

 んんんんんん?

 食い逃げ犯の声にきき覚えがあるような気がした。向こうの方の席ということと、フードをかぶっているので顔がわからない。

「というわけで、このまま失敬させてもらうよ」
「ですから、困ります。銅貨二枚、支払ってください。二人分も食べているんですよ。そもそも、マズかったらそんなに食べられるわけないでしょう?」
「人間、腹が減りすぎていたらマズすぎても食べれるんだよ」

 なんてことなの。ずいぶんと理屈を言うのね。

 っていうか、無銭飲食もあそこまでいったら救いようがないわよね。

「お嬢様。あの声、きいたことがあるんですけど」
「カルラ、あなたも?わたしもおなじことをかんがえていたの」

 カルラと顔を見合わせてしまった。

 男性の知り合いって、わたしにしろ彼女にしろそう多くはない。
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