キスだけでは終われない

「普段が黒とかグレーばかりだったでしょう。いきなりピンクとかはきっと抵抗があるだろうなぁ、と思って少し地味な色合いにしたわよ」

「まあ、ピンクよりはいいけど、なんだか落ち着かないな…」

「今日持ってきた服の中にはピンクもあるからそのうち着てみてね」

「さぁ、メイクも出来たし出掛けようね。どうせ度なんて入っていないんだから今日は眼鏡はなしよ」

「度はないけど、UVとブルーライトのカットにはなってるんだけど…」

「仕事に行くんじゃないんだから、いらないの」

彩未ちゃんの手が伸びてきて眼鏡を外し、ニッコリ笑って

「うん。無い方が可愛い。ほら見て、香苗はスタイルだっていいんだから、こんなに体のラインすっきりしてて綺麗に着られてるのよ。嬉しいわ」

そう言われると何も言い返せず、眼鏡は外すことにした。

普段が紺かグレーのパンツスーツが多いので、明るめな色合いに仕上げられ、さらに顔を隠すためでもある眼鏡までとられた自分に慣れず落ち着かない。

彩未ちゃんに「可愛い」と言われ姿見の前に立たされる。鏡の中にはいつもの地味な見た目とは全く違う私がいた。思わず「えっ?これ誰?」と呟いて笑われてしまった。

隣に並ぶ彩未ちゃんはいつも通りの美しさだったけれど、私も綺麗に変身していて、子供の頃に姉妹に間違えられていた時を思い出していた。
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